食いしばりの原因とは?歯や顎への影響とマウスピースによる対策

朝起きたときに顎が疲れている、歯がしみると感じることはありませんか。
そのような症状がある場合、自覚がないまま歯を強くかみしめる習慣が起こっている可能性があります。
食いしばりとは、眠っている間などに上下の歯を強く接触させてしまう状態を指します。
精神的なストレスや疲労、睡眠の質の低下などが重なることで起こると考えられています。
実際に歯ぎしりや食いしばりでは、睡眠中に非常に強い咬合力が生じ、100kgを超える力が歯にかかることもあると報告されているのです。
この力が繰り返しかかることで、歯や顎の組織に少しずつ負担が蓄積する可能性があります。
参照:J-STAGE|認知症治療研究会誌 2021「高齢者や認知症患者におけるめまいと歯ぎしり・食いしばりの関係」>
今回は、食いしばりが起こる原因や歯・顎への影響、さらに歯科医院で行うマウスピース対策について解説します。

菅野 岳志 院長
経歴岩手県立大船渡高等学校
日本大学松戸歯学部
日本大学松戸歯学部附属病院臨床研修医修了
日本大学大学院松戸歯学部歯学研究科組織学専攻修了
医院名:かんのデンタルオフィス
所在地: 〒192-0073 東京都八王子市寺町46 ラグゼナ八王子寺町 1F
食いしばりに気づくためのセルフチェック

睡眠中の食いしばりは無意識に起こることが多く、ご自身では気づきにくい習慣の一つです。
しかし、お口の状態や身体の変化としていくつかのサインが現れることがあります。
まずは、次の項目に当てはまるものがないか確認してみましょう。
✔朝起きたときに顎が疲れている、だるいと感じる
✔むし歯がないのに歯がしみることがある
✔歯の先端が平らになっているように見える
✔頬の内側や舌に歯型のような跡がついている
✔詰め物や被せ物が外れやすい
✔肩こりや頭の重さを感じることがある
✔歯をかみしめていることを指摘されたことがある
✔集中しているとき、上下の歯が触れていることが多い
複数の項目に当てはまる場合、食いしばりが関係している可能性があります。
セルフチェックはあくまで目安ですが、気になる症状が続く場合は歯科医院でお口の状態を確認するとよいでしょう。
食いしばりが起こるおもな原因|睡眠やストレスとの関係

食食いしばりは、一つの原因だけで起こるものではなく、いくつかの要因が重なって生じると考えられています。
生活習慣や睡眠状態、心理的ストレス、歯並びやかみ合わせなど、複数の要素が関係することがあります。
ここでは、食いしばりと関係が深いとされるおもな要因を見ていきましょう。
睡眠の質と食いしばりの関係
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりは、医学的には「睡眠時ブラキシズム」と呼ばれています。
人の睡眠は、深い眠りと浅い眠りを周期的に繰り返しますが、特に浅い睡眠の段階で歯ぎしりや食いしばりが起こりやすいとされています。
飲酒や疲労、生活リズムの乱れなどによって睡眠の質が低下すると、浅い眠りの時間が増えることがあります。
その結果、睡眠中に歯を強くかみしめる動きが起こりやすくなると考えられているのです。
参照:厚生労働省|働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
|身体のストレス反応から考える職場のメンタルヘルス対策「ストレスと口の健康」>
精神的ストレスと顎の緊張
精神的なストレスや緊張も、食いしばりと関連する要因の一つとされています。
人は強い緊張状態にあると、無意識のうちに筋肉へ力が入りやすくなる傾向があるのです。
顎の筋肉も同様で、ストレスが続くことで歯をかみしめる動きが増える場合があります。
仕事や家事などで忙しいときや、集中して作業をしているときに歯を食いしばっていることに後から気づく方も少なくありません。
生活習慣や姿勢が食いしばりを招くことも
日常生活の習慣も、食いしばりと関係する要因になることがあります。
特に、次のような生活習慣がある場合、顎周囲の筋肉が緊張しやすくなることがあります。
・長時間のデスクワーク
・スマートフォンの長時間使用
・猫背などの姿勢の乱れ
・飲酒や寝酒
・睡眠不足
パソコン作業やスマートフォン操作に集中していると、無意識のうちに上下の歯が接触した状態になっていることはありませんか。
本来、安静時には上下の歯は接触しておらず、わずかなすき間がある状態が自然とされています。
歯が触れていることに気づいたときは、意識して上下の歯を離すようにしてみましょう。
歯並び・かみ合わせと食いしばりの関係
歯並びやかみ合わせの状態が、食いしばりの一因となる場合もあります。
特定の歯に強く力がかかりやすい場合や、かみ合わせのバランスが崩れている場合には顎の筋肉が緊張しやすくなることがあるのです。
ただし、食いしばりは歯並びだけで起こるものではなく、睡眠やストレスなど複数の要因が関係しているケースが多いとされています。
食いしばりが続いた場合に起こりうる歯や顎への影響

食いしばりは一時的であれば大きな問題にならないこともありますが、長期間続くと歯や顎にさまざまな影響が現れることがあります。
特に睡眠中の食いしばりは自覚しにくく、知らないうちに歯や顎へ負担が蓄積してしまうことがあるのです。
歯ぎしりや食いしばりでは、食事のとき以上の強い力が歯にかかることがあるといわれています。
その力が繰り返しかかることで、歯だけでなく歯を支える組織や顎関節にも影響が出ることがあります。
歯の摩耗(咬耗)が起こる
食いしばりが続くと、歯と歯が強くこすれ合うため、歯の表面が少しずつすり減っていくことがあります。
これを咬耗(こうもう)と呼びます。
歯の先端が平らになったり、歯の表面のエナメル質が薄くなったりすると、内部の象牙質が刺激を受けやすくなり、冷たいものがしみる原因になることがあります。
また、歯のすり減りが進むと、かみ合わせの高さが変化し、顎に負担がかかることがあるのです。
歯の欠けや亀裂(クラック)の発生

強い力が繰り返しかかると、歯に細かいひび(クラック)が入ることがあります。
このひびが進行すると、歯が欠けたり、噛むと痛みを感じたりすることがあります。
歯に大きな負担がかかる状態が続くと、歯の破折につながる可能性もあるため注意が必要です。
詰め物・被せ物へのダメージ
食いしばりの力は、歯科治療で入れた詰め物や被せ物にも影響することがあります。
強い圧力が繰り返しかかることで、
・詰め物が外れる
・被せ物が欠ける
・接着部分がゆるむ
といったトラブルにつながることがあります。
同じ場所の詰め物が何度も外れる場合、食いしばりが関係していることもあります。
歯ぐき・歯周組織への負担

歯は骨の中に埋まっており、歯ぐきや歯根膜などの歯周組織によって支えられています。
強い食いしばりが続くと、この歯周組織にも力が加わり、負担が蓄積することがあります。
その結果、
・歯が浮いたように感じる
・噛むと違和感がある
・歯が揺れているように感じる
といった症状が現れることがあります。
特に歯周病がある場合は、歯を支える骨が弱くなっているため、食いしばりの影響を受けやすくなることがあります。
顎関節や咀嚼筋への影響

食いしばりでは顎の筋肉が長時間働き続けるため、顎の周囲の筋肉が疲労することがあります。
その結果、
・朝起きたときに顎がだるい
・口を開けると音がする
・口が開けにくい
・こめかみや頬が張る
といった症状が現れることがあります。
顎関節に負担がかかる状態が続くと、顎関節症につながることもあります。
食いしばりによる負担を軽減するマウスピース(ナイトガード)対策

食いしばりによる歯や顎への負担を軽減する対策として、歯科医院ではマウスピース(ナイトガード)を使用することがあります。
ナイトガードは、就寝時に装着するマウスピースで、歯と歯が強く接触するのを防ぎ、歯や顎にかかる力を分散する役割をもつのが特徴です。
睡眠中の食いしばりや歯ぎしりは無意識で起こるため、ご自身の意識だけでコントロールすることが難しい場合があります。そのため、歯や顎への負担を軽減する方法として、マウスピースによる対策が行われることがあるのです。
当院では、お口の型をもとに用途に応じたオーダーメイドのマウスピースを製作します。
患者さんお一人お一人の歯並びやかみ合わせに合わせて製作するため、装着時の安定感が得られやすく、違和感を抑えながら使用することができます。
ナイトガードは、顎関節への負担の軽減や歯の摩耗を防ぐ目的で使用されるマウスピースです。
食いしばりの力をやわらげることで、歯や顎へのダメージを抑える対策として取り入れられることがあります。
マウスピース対策のメリット|期待できる効果
マウスピースによる対策には、次のような効果が期待できます。
・歯のすり減り(摩耗)を防ぐこと
・歯や顎にかかる力を分散できること
・詰め物や被せ物への負担を軽減すること
・顎関節や筋肉への負担をやわらげること
食いしばりそのものを完全に止めることは難しい場合がありますが、マウスピースを装着することで歯や顎に直接伝わる力をやわらげることが期待できます。
マウスピース療法は、歯を保護する方法として、歯科医院で行われる食いしばり対策の一つです。
食いしばりが気になる場合は歯科医院へ相談しましょう

食いしばりは、ご自身では気づきにくい習慣ですが、歯のすり減りや顎の疲れ、詰め物が外れやすいといったさまざまなサインとして現れることがあります。
強い力が長期間歯や顎にかかることで、歯の摩耗や歯周組織への負担、顎関節の不調につながることもあるため、早めに気づいて対策をとることが大切です。
お一人お一人のお口の状態に合わせて、食いしばりへの対策やケア方法についてご提案いたします。
食いしばりが気になっている方は、気軽にご相談ください。




